飛べないヒナがいたら?
あなたがみつけたヒナが「巣立ヒナ」だったら・・・自分で立てないほどに弱ってないかぎり、天敵(てんてき)などの危険がないかぎり、放っておいて親にまかせるのが一番の手助けになります。
巣の中にいるヒナたちは一斉に巣立つわけではありません。より多く餌(エサ)を食べて元気に育った子はもちろん一番乗りで巣を飛び出しますが、中には兄弟につられて身投げするように飛び出すヒナ、数日遅れて巣立つヒナ、親鳥がいない間に飛び出してしまうヒナもいます。こうしてそれぞれの場所へ降り立ったヒナたちのほとんどはまだ飛べませんし、さらに、ちょっとのことで驚いて走って逃げたり、コントロールもきかない翼で飛べるだけ飛んでいってしまったりします。
親鳥はこうしてあちこちに散らばるヒナを探し、それぞれにエサを運び、それぞれにいろんなことを教えなければならないのです。さらに、いつまでたっても巣から離れないヒナもいて、まさにドタバタの子育てですから、親鳥は必ずヒナの近くにいるとは限りません。
こうして毎日ヒナを探しているとも言える親鳥たちは、ヒナがいなくなってもちょっとやそっとのことではあきらめません。ヒナがいない時には必死になって探しまわります。スズメっ子クラブには、「迷子になっていたヒナがちゃんと親鳥と再会できた」というレポートがたくさん届いています。中には保護して二週間が過ぎていたのに再会できたケースもあるほどです。
ですから、頑張る親鳥に心配をかけないためにも、ケガのないヒナは放っておきましょう。危険な場所にいるヒナは、安全な場所に移してあげましょう。野生の力は強く、野鳥たちはほとんどの問題を自分たちの力で解決しています。
ほんとに迷子なの?
ほんとうに迷子なのかどうか、調べる方法を覚えておきましょう
安全な場所についてはこのページの最終項目安全な場所と時間帯をお読みください
「そのう(そ嚢)」を見てみよう!
ヒナの「そのう」がふくらんでいたり、「そのう」の中にエサが透けて見えていたら、近い時間に親鳥がちゃんとエサを食べさせている証拠です。親鳥は忙しくて、そのヒナはきっと一人でいる練習をしてるところですから、そっとしておいてあげましょう。「そのう」についてはレスキュー&育て方の緑枠内野鳥のエサのあたえ方をお読みください。
糞(フン)を探してみよう!
ヒナがいる場所の近くで新しい糞(フン)をさがしてみましょう。みつけた糞に白い色と黒や緑っぽい色が混じっていたら、近い時間にその近くで親鳥がエサを食べさせていた証拠です。フンが白い色一色だったりベチャッと水っぽいときは、しばらくはエサをもらってないことになります。フンがみつからない時はその場所に来たばかりかもしれないから、5mくらい離れた木陰や物陰から、静かに時間をかけて観察してあげましょう。糞についてはレスキュー&育て方の緑枠内育てる上での注意点をお読みください。
やっぱり迷子だったら?
「そのう」がぺしゃんこだった、糞(フン)に色が混じってなかった、フンが水っぽくてベチャッとしていた、観察していて3時間たっても親鳥や仲間の鳥が近づいてこなかった・・・そのヒナはやっぱり迷子のようです。以下の方法で手助けしてあげて、またもといた場所の近くの安全な場所にもどしてあげましょう。親がみつけてくれるのに時間がかかることもありますから、もといた場所にもどす時にはエサを持っていっておくと良いですね。
■ 暗くなるまでにたっぷり時間がある時
できれば臨時の栄養補給をしてあげて、5mくらい離れた木陰や物陰から、静かに時間をかけて観察してあげましょう。3時間近く待っても大人の鳥が一羽も寄ってこない時にはエサを食べさせてあげて、それからまた離れて観察しましょう。
■ 暗い時間帯、または親が来ないまま暗くなってしまったら
一晩預かってあげて、次の日のできるだけ夜明けに近い時間に元いた場所にもどしてあげましょう。迷子の場合、親鳥がみつけてくれるのに数日かかることもありますが、成鳥になる前の一番栄養が必要なこの時期、親鳥の存在はヒナの命そのものです。野生の鳥を人が育てるのはとても難しく、うまく育っても栄養バランスによる病気やストレスなど様々な問題が起こります。なんとしても親との接触ができるように、親さがしを続けてあげましょう。
■ 中には発育不良や先天的な虚弱体質などで野生では生きていけない子たちもいます
ごくまれにこうした人の手助けを必要としているヒナもいますが、野鳥が人の手に保護されることの利点は、ケガや多少の栄養不良は治してあげられるということですね。なんだか様子がおかしいな・・・と思った時は、県の保護担当の窓口(県によって担当する課の名前がちがう)や保護施設に連絡して、どうしてあげたらいいか相談しましょう。ただし、県によっては素早く対応できないところもありますし、休日や時間外の場合もありますから、そういう場合は動物園や動物病院をさがしてお願いしてみましょう。電話やメールでの救護相談をしてくださる病院もありますから、利用しましょう。これらの連絡先を調べるには左メニューの保護施設・病院リストへどうぞ。
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よく保護されるケース
カラス、猫、ヘビ、車、暴風雨や嵐・・・野生はどこでも危険でいっぱいですが、そういう場所で生まれてそういう場所を生き抜いていくことこそが野生の営みです。人は困っているヒナたちをみつけると心配で保護してしまうものですが、野鳥の飼育(しいく)はとてもむずかしく、ほとんどの場合が栄養不足による病気や死につながっています。ある意味では、健康なヒナを人が保護してしまうことも天敵の存在と同じように危険なことだと考えてください。
猫やカラスなどの動物の危険がある時は?
猫やカラスにおそわれている場合、野鳥を守ることより猫やカラスを追い払うことを優先してください。そのすきに、逃げられる鳥は逃げますし、危険も人も遠ざかっているうちに親鳥がヒナを誘導して助けることができます。猫やカラスが多い場所にぽつんとヒナがいることも多いものです。いずれの場合も、ケガがないようだったら近くの安全な場所に移してあげましょう。近くに安全と思われる場所がない場合は、親鳥を誘導する形で安全な場所まで移動させます。くわしくは次項↓をお読みください。
暗い夜道にいたら
近くの繁みやもの陰にもぐりこませてあげましょう。夜をひとりぼっちで過ごすのも大事な訓練のひとつですから、手を出さないようにしましょう。車の危険がある場合は草むらの繁みやもの陰などの安全な場所に移動してあげましょう。猫などの危険がある場合に限り一晩あずかってあげて、次の日のできるだけ夜明けに近い時間に元いた場所か、その近くの安全な場所にもどしてあげましょう。
人混みや道路にいたら?
車の多い道路や人混みの多い通り、駅やスーパーの駐車場などにぽつんとヒナがいることもよくあります。巣立ったばかりのヒナたちはろくに飛べもしないのに、突然方向も定まらないまま無鉄砲に飛んでしまうことがありますから、たぶん、そうして人や車が多い場所に着地してしまったのでしょう。ケガがないようだったら、近くの安全な場所に移してあげましょう。
雨にぬれていたら?・・・人がさわるのは状況を悪化させるばかりです
鳥の尾羽の付け根の辺りにはちいさなイボのような脂腺があり、鳥たちはこの脂腺から出る脂をクチバシで全身の羽毛に塗りつけるために羽づくろいをします。羽に行きわたったこの脂のおかげで、鳥の羽根はよく雨をはじくようになり、体温を逃さないようになるのです。
ですが、濡れた羽毛に人の手が触れると、表面の油分がとれて雨がしみこむようになってしまいます。これでは心配もよけいなお世話になってしまいますね。かわいそうだし、心配でもありますが、雨や寒さを耐えるのも野生を生きていく上では大事な試練なのです。たくましく育てよ!と祈りながら、放っておきましょう。
もし、このことを知らずに雨に濡れたヒナにたっぷりさわっていたら、いったん保護をしてタオルなどでよく水気をふき取ってあげましょう(ドライヤーは決して使わないこと)。身体が乾いたらしっかり羽づくろいするのを見とどけてから、またもといた場所か、その近くの安全な場所にもどしてあげましょう。
U字溝や穴の中に落ちていたら
これもよく見かける光景で、浅い穴やU字溝でもヒナたちにとって迷路のようにぬけだせない場所です。親鳥たちにもどうすることもできません。こんな時にはちょっと手助けして、ヒナたちを溝や穴の中から出してあげましょう。人が近くにいると親鳥たちが近寄れないので、すぐにその場を離れましょうね。心配なときは遠く(できれば5m以上)に隠れて見守りましょう。
その他のケース
交通事故、ガラスにぶつかった、粘着剤にからまっていた、フラフラしていた・・・と、他にもいろんなケースで保護される野鳥がいます。ケガや病気をしてたら?のコーナーにもいろいろなケースが書いてありますから読んでおきましょう。
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親鳥に返すときの注意点
ヒナを保護している方は、かならずこの項目を最後まで読んでください
安全な場所についてはこのページの最終項目安全な場所と時間帯をお読みください
人が人間らしく生きたいと願うように、鳥として生まれてきたからには、仲間と一緒に大空を駆け巡るのが一番の幸せだろうと私は思います。野鳥が人の手に保護されたことの利点は、ケガや多少の栄養不良は治してあげられるということですが、では、ケガや病気が治ったら? 野生でも生きていけるほどに元気になったら?・・・この時点で人が育てる理由はなくなってしまうのではないでしょうか?
もちろん、かならずしも親鳥がみつけてくれるという保証はありませんが、ヒナの将来のためにも、保護して元気をとりもどしたヒナたちは一日でも早く仲間のところに返してあげるのが一番の方法です。保護した方の仕事や生活上でのいろんな都合もあると思います。でも、人にとっての数時間や数日を割くことが、野鳥たちの数年ないしは十数年という冒険に満ちた野生の暮らしにつながると思えば・・・これって素晴らしいことではないですか?
里親さんにとってはたいへんな作業ですが、なにかの縁で手許に保護しているわけですから、元気になったのであればなんとか時間を作って、より適切な方法で将来に向かわせてあげる・・・保護をするということは、一方でこうした責任を伴ったものだと私は考えています。ちょっとの間だけ保護したヒナでも、親鳥に返す時には気をつけなければいけないことがたくさんありますので、以下の注意点に気をつけて安全に親鳥と再会させてあげましょう。
親鳥かどうかわからない場合でも、クチバシに黄色(または白)い色が残ったヒナは他の仲間がよく面倒を見てくれます。クチバシの黄色を目印に、親でなくても幼いヒナを守ろうとするからです。近くに同じ種類の鳥が何度も近寄ってくるようであれば安心です。気長にがんばってあげましょう。
ただ放すだけでは生きていけません!
すでに自分でエサをみつけて食べることができるようなら大丈夫ですが、さし餌をしてあげないと食べられなような幼いヒナは、自分でエサを見つけることさえできません。ただ放すだけでは決して安心はできません。数時間であれ数日であれ保護をすることで、少なくとも親鳥から引き離してしまっているわけですから、以下の項目をよく読んでかならず親鳥があらわれるのを確認しましょう。
すぐに戻す場合や保護中に親鳥と接触できなかった場合
(自宅から遠くで保護したり、知人からあずかった場合など)
一時的に保護したヒナが、エサをあげたりあたためたりしていたらすぐに、あるいは数日後にすっかり元気になったということもよくあります。できるかぎり早く保護した場所、またはできるだけそこに近い安全な場所に返してあげましょう。早ければ早いほど親鳥がみつけてくれる可能性が高く、安心です。
すぐにみつけてくれた例の方が多いですが、数日たってようやく親がきたという例もありますので、あきらめないことが大事です。たいへんなことですが、保護して育てあげる労力と、ヒナが自分の世界に戻れる可能性など考えあわせれば、やはり親に返すのが、一番安全な方法です。
また、親鳥がなかなか現われない場合は、ヒナの成鳥の段階に応じてときどき餌を補給しなくてはなりません。自分で餌をつついて食べれるようなら、餌をばらまいておいてあげましょう。暗くなりかけても親鳥が来ない場合でもあきらめずに、また次の日にも頑張りましょう。
すぐに戻せない場合や保護中に親鳥と接触できそうな場合(自宅近くで保護した場合など)
できる限りヒナの声が外まで聞こえるように工夫をしてください。親鳥がヒナの鳴き声を聞き分けてみつけてくれるはずです。
親鳥がヒナの居場所をみつけて餌を運ぶようになったら、親鳥が近くにいるのを確認してから放しましょう。猫などの心配がある場合は、親鳥が近くにいるのを確認した後、鳥カゴなどで運んで安全な場所で放しましょう。親鳥はヒナの声に誘導されて必ず近くで見守っています。
ケガがあったり、極端に弱っていてすぐに放せない場合でも、親鳥との接触を絶たないようにしてください。外に鳥かごなどで出して育てる方法もあります。すずめっ子クラブには「親鳥がみつけてくれた後、網戸を細く開けたおいたら親鳥がエサをくわえて室内まで運ぶようになった」というレポートも届いています。このように回復するまで親鳥と共同でヒナを育てることができれば、ヒナの将来のためには理想のケースです。ただし、天敵の侵入や直射日光など危険とも隣り合わせなので、見守れないときにはかならず窓を閉めておくなど十分に気をつけてください。
猫やカラスの危険がある場合
できれば鳥カゴなどに入れたまま、保護した場所か、その近くの安全な場所に置きます。親鳥や同種類の鳥が何度も接触するようであれば、鳥たちが離れた時にゆっくりと近付き、ヒナをカゴなどから出してあげ、ふたたびゆっくりと退散しましょう。親鳥が安全な場所にヒナを誘導してくれるはずです。
親鳥との接触を確認する
遠く(できれば5m以上)離れた木陰や物陰などからできるだけ静かに観察します。双眼鏡があると便利ですね。親鳥や同じ種類の鳥が何度も近づいてくるようであれば成功ですし、さらに餌など与えているところを確認できれば大安心です。
ほとんどの場合、親鳥はすぐにみつけてくれますが、暗くなりかけても親鳥が来てくれない場合は連れ帰り、翌日か次のチャンスに望みをつなぎましょう。気の長い作業になりますが、ヒナのために頑張ってあげてください。
長く保護したヒナを放野する場合
親鳥と接触できないまま人の手で育てられて数週間を越えたり、クチバシの黄色(または白)も目立たないほど成長したヒナを野生に戻す場合には、すでに親鳥といっしょに暮らす時期を過ぎてしまっていますから、里親さんは親鳥に代わっていろんな訓練をして一人立ちさせてから野生にもどす必要が出てきます。こういう場合はレスキュー&育て方の緑枠内野生にもどすためには?をお読みください。
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安全な場所や時間帯
安全な場所とは
■ ヒナをみつけた場所からできるだけ近いところ
■ 猫にねらわれにくい木の枝やカラスにねらわれにくい葉影
■ 車や人の通行量の少ない場所で、長く直射日光が当たらない場所
■ 自分の足でしっかり立っているヒナは木の枝の低いところの葉影になる部分に乗せてあげましょう
■ 足元がおぼつかないヒナは繁った茂みの根元などにもぐり込ませてあげましょう
■ すぐ近くに深い水辺のある場所は、まだうまく飛べないヒナが落ちてしまう危険があります
保護したヒナを放す場合
■ お天気の良い日のできるだけ早い時間に放しましょう
■ ほとんどの野鳥は夜は目が見えません。ですから、夜には絶対に放さないでください。
■ 保護した場所に着くまでは箱に蓋をしておくなどして、確実に保護した場所まで連れていきましょう。
飛べないと思ったヒナが突然飛んでいってしまったというケースも多いものです。親から離れた場所では、ヒナは生きていけません。
■ できれば親鳥との接触が確認できるまで、遠く(5m以上離れたところ)からこっそり見ていてあげましょう。
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