野鳥たちは天敵から身を守るため、死の直前まで決して弱みをみせません。弱っていると、まっ先に天敵にねらわれるからです。まだ幼いヒナであっても、こうした本能を生まれもっています。ですから、鳥の死はかなしいほどに突然です。こうした野鳥たちが見るからに弱っているということは、死に直面している状態だと考えてください。
救急処置をしてしばらくたっても回復しないような場合は、専門家の手にまかせるのが一番の安全です。野鳥は国から守られていますから、ケガや病気、交通事故で弱った野鳥については動物病院や保護センター、動物園などで積極的に診察(しんさつ)してくれますから、ヒナでも成鳥でも、ケガをしている野鳥をみつけた時はすぐに県の保護担当の窓口(県によって担当する課の名前がちがう)や保護施設に連絡して、どうしてあげたらいいか相談しましょう。ただし、県によっては素早く対応できないところもありますし、休日や時間外の場合もありますから、そういう場合は動物園や動物病院をさがしてお願いしてみましょう。電話やメールでの救護相談をしてくださる病院もありますから、利用しましょう。これらの連絡先を調べるには左メニューの保護施設・病院リストへどうぞ。
また、あずかって保護してくれるとは限りませんから、できれば保護する前に連絡した方が良いでしょう。自分で育てられないからと保護をしなくても、これは決して悪いことではありません。中には老衰で弱った野鳥など、動けなくてもケガがない時には放っておいた方が良いケースもあるので、よく観察してみましょう。
どうしても病院に連れていけない場合は、以下にいくつか例をあげていますので、参考にしてください。
まず気をつけること
■ これから保護する場合は、かならず保護する時の注意点を読みましょう
■ 意識がない場合にはゆすったりせず、できるだけ動かさないようにしましょう
■ 気絶、失神して意識がない鳥には決して水を飲ませないようにしましょう
■ 水分の補給については注意が必要です
野鳥に水分あたえるときは、飲ませるものを人肌よりちょっと熱めにあたためて、スポイトや箸の先などで閉じたクチバシのはしっこに1滴つけると自分でなめとります。小鳥なら1〜2滴で充分です。大型の鳥の場合は身体の大きさによってもっとたくさんあたえますが、飲みたくなくなったらクチバシにつけても飲まなくなるそうです。
注意することは、水分を口の中に直接入れないこと。鳥は咽(のど)の手前に声門(せいもん)の穴があり、そこから気管、肺へとつながっています。水が気管の中に入ると死んでしまうケースもありますから、クチバシを開かせて水を流し込むようなことは絶対にしないでくださいね。
また、ヒナの時期には水分は餌に含まれるものからとる程度ですので、あたえ過ぎると下痢(げり)をします。下痢も幼い身体には大きな負担になりますから、緊急の時と餌をまったく食べられないとき以外、長くはあたえ続けないようにしましょう。もし、もっと欲しがるようだったら、少し時間をおいてからあたえましょう。
つかまえて処置をする必要がある時は
自分で保護する必要がある場合は以下の《保定について》をしっかり読みましょう。
《保定について》
保定(ほてい)とは、野生の生きものたちをできるだけ傷つけないように保護したり治療したりするために、生きものの身体をじっとさせることです。自分で保護する必要がある場合はこの方法をとります。
■ 小型野鳥の保定の仕方
ただつかまえる場合は翼をたたんだ状態で、上からそっと胴体部分をにぎります。小型の鳥の身体はとてもデリケートで、強くにぎってしまうと内臓を圧迫して、それだけで死んでしまうことがありますから、強くにぎりすぎないように注意しましょう。
また、手にとって治療をしたりする必要がある場合はしっかりと保定しましょう。小型野鳥の保定の仕方については写真や絵付きでとてもわかりやすいサイトさまからのご協力をいただきましたので、以下のリンクページをしっかりとお読みください。ただし、保定についてのご質問などはクラブの掲示板へお願い致します。
・Pii's
Homepage>文鳥の飼育方法>文鳥の保定方法
■ 中・大型野鳥の保定の仕方
1. 用意するもの
・鳥の身体全体をすっぽりおおう大きさのタオルや布など。できるだけ黒っぽい色で、周囲が透けて見えない、空気が通る布であればなんでもかまいません。
・身体がすっぽりおさまって、動き回れない程度のダンボールなどの箱を用意し、空気穴をあけておきます。
・あばれてつついたりすることもあるので、安全のために厚手の手袋や軍手などをつけておきましょう。
2. できるだけ暴れたり逃げたりしないように鳥から見えない方向から静かに近づき、体全体にすっぽりと布をかぶせて目が見えない状態にします。そして、布の上から翼をたたんだ状態に手で包み込みます。
3. 布がはずれないように注意して、目隠しの状態のまま箱に入れます。目が見えない状態になるとあまりあばれなくなりますから、箱ごと移動しましょう。移動中には、目をつつかれたりしないように、箱に顔を近づけたりのぞいたりしないようにしましょう。
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ガラスにぶつかってたおれている野鳥
ガラスの窓のや扉の前に野鳥が倒れていたら、ほとんどの場合はガラスにぶつかったと考えられます。弱って保護される原因の多くはこのケースです。この場合は、猫やカラスなどに襲われないように、強い陽射しを浴びないように日陰や草むらに置いてあげれば、数時間で回復して飛んでいくケースが多いものです。避難させる場所がない場合は一時的に保護をして、箱の中などで安静にしてあげましょう。ただし、飛べるようになった時に閉じ込められたとパニックを起こしてさらにケガをしないように、いつでも飛んでいける状態にしておきましょう。
仰向けにひっくり返っている場合は脳震盪(のうしんとう)を起こしている可能性もあります。この場合はゆすって起こしたりせず、できるだけ動かさずに日陰を作ってあげましょう。二、三時間たっても回復しない場合は県の窓口に連絡して、専門家の手にまかせましょう。病院へ行くことができず、自分で処置をする必要がある場合は、このページ最下部のリンクをたどって、応急処置について読んでみましょう。
日射病・熱射病にかかった野鳥
こういう場合は冷房で急速に冷やしたり、氷で冷やしたり水をかけたりと、急激に冷やすようなことはしないようにしましょう。
■ 屋外で日射病や熱射病になったら?
ちいさなヒナがよくこの症状で保護されます。日射病・熱射病の可能性がある場合は、ぐったりしていても決して保温はしないで、できるだけ涼しい場所に移してあげましょう。それから、常温の水で濡らして固くしぼったタオルをあてるなどして少しづつ身体を冷やして、ぬるめの水分を補給してあげましょう。日陰や草むらに置いてあげれば、数時間で回復するケースも多いものです。二、三時間たっても回復しない場合は専門家の手にまかせましょう。
■ 室内で日射病や熱射病になったら?
長く直射日光があたる場所においたり、夏場に閉じきって室温が上がりすぎたことなどが原因です。涼しい場所に移して屋外の場合と同様の処置をします。
放し飼いで飛び回っているときには暑ければ自分で逃げますが、カゴの中などに入れたり部屋に閉じ込めた状態で逃げられない場合はくれぐれも注意してあげましょう。日射病や熱射病を予防するには、強い陽射しがあたる場所や部屋にはおかないこと、いつも風通しを良くしておいてあげることなどが大事です。残して家をあける時などはとくに注意しましょう。また、極端な症状がなくても、糞に水気がなく固かったら、この時も要注意です。すぐにぬるめの水分を補給してあげましょう。
* 日射病・熱射病については獣医師のたま先生よりアドバイスをいただきました。感謝!
鼻水、下痢、痙攣、羽毛を立ててうずくまった野鳥
たまに病気で保護される野鳥もいます。外傷はないのに羽毛を立ててうずくまっていたり、鼻水が出ていたり、下痢でお尻の辺りが汚れてたりしている場合には感染症にかかっている可能性があります。また、釣りのオモリや散弾による鉛中毒の場合はよろよろと足元が不安定で、ひどい場合は歩けなかったり全身がマヒしたりしていますし、農薬による中毒の場合はひどく痙攣したりするそうです。いずれの場合も獣医師の治療がなければ回復する見込みはありませんので、すぐに獣医さんを探してあげる必要があります。
中毒の場合は処置が早ければ早いほど助かる確率が高くなります。感染症の場合は、人体に対してまったく不安がないとは限りませんので、すでに保護している方は注意が必要です。
・ 野鳥に触る前後にかならず手を洗う
・ 野鳥に触った手で自分の口に触らない
・ 口移しでエサを与えたり、野鳥がつついたものを食べない
・ 糞はできるだけ早く始末する
以上、最低限のことを守っておけば人間に感染するような危険はありませんが、乳幼児やご年配、体力が弱った家族がいる場合は、野鳥と接触させない方が安全でしょう。
ペットや交通事故などが原因でケガをした野鳥
猫やカラスにおそわれている場合は、野鳥を守ることより猫やカラスを追い払うことを優先してください。そのすきに、逃げられる鳥は逃げますし、危険も人も遠ざかっているうちに親鳥がヒナを誘導して助けることができます。ケガがないようだったら、近くの安全な場所に移してあげましょう。
交通事故の場合は、見た目にケガがなくても打ち身や骨折、内出血をしている危険性があります。こういう場合は、できればちゃんと立っていられるか、きちんと枝などに止まっていられるか、翼や足のバランスがきちんととれているか・・・などチェックしてあげましょう。異常がある時はできるだけ早く動物病院でみてもらいましょう。
病院へ行くことができず、自分で処置をする必要がある場合は、このページ最下部のリンクをたどって、応急処置について読んでみましょう。
ケガで血を流している場合、鳥はちょっとの出血でも命取りになります。血が出ているキズの部分にティッシュやガーゼなど清潔な布を当ててちょっとおさえていると、ほとんどの場合は血がとまります。消毒をする場合は「イソジン」が良いそうです。人用の軟膏(なんこう)などはなめてしまう危険がありますから、ぬらない方が安全です。血管が切れてだらだら出血しているような場合は、残念ながらほとんど手遅れになるそうです。
また、血が流れている状態では、血には素手でさわらないようにしましょう。野生の生きものは内・外部寄生虫やなんらかの病原菌を持っていることもありますので、用心にこしたことはありませんね。
翼や足がだらんと垂れている野鳥
翼をだらんとたれていたり、片足がぶらぶらしている場合、骨を折っていることが多いようです。病院へ行くことができず、自分で処置をする必要がある場合は、このページ最下部のリンクをたどって、応急処置について読んでみましょう。
粘着材やトリモチ被害の処置
県の担当の係に連絡すれば、保護に来てくださる場合もありますから、県の保護担当の窓口(県によって担当する課の名前がちがう)や保護施設に連絡して、どうしてあげたらいいか相談しましょう。ただし、県によっては素早く対応できないところもありますし、休日や時間外の場合もありますから、そういう場合は動物園や動物病院をさがしてお願いしてみましょう。電話やメールでの救護相談をしてくださる病院もありますから、利用しましょう。これらの連絡先を調べるには左メニューの保護施設・病院リストへどうぞ。
■ 自分で処置する場合
しっかり保定(ほてい)した状態で部分的にタオルをめくり、粘着材の羽にくっついていない部分だけを切り取ってあげます。できれば、一人が保定して一人が切り取るというように、二人で作業を行った方が安全です。まちがって風切羽を切ってしまったら飛ぶことができなくなりますから、できるところだけ切り取ったら無理をせず、あとは病院にお願いした方が安全です。目隠しのままタオルなどで動けないように巻いて、身体がすっぽりおさまる程度の箱に入れ、鳥に詳しい病院に連れていってあげましょう。こうした事故の場合は快く見てくださる病院が多いものです。
■ ねばりけをとる方法
粘着材を切り取ったら動けるようになった場合でも、ある程度ねばりけが取れていなければ危険なままです。曜日の問題などで病院に連れて行けない場合には、下記の方法でねばりけをきれいに落してから放してあげましょう。決して洗剤で洗ったり、ベンジンで拭いたりしないでください。羽が水をはじかなくなったり、体温調節ができなくなったりして危険です。根気強く少しづつ落してあげましょう。
粘り気があまりひどくない場合は、ベビーパウダー(シッカロール)や灰をねばついた部分にはたいて、しばらく待ってからぽろぽろとこすり落します。足やくちばしは綿棒を使うと取りやすいそうです。首筋などこすり落しにくい部分には、綿棒などでサラダ油をぬって、ふき取ってあげると良いそうです。極端な粘り気が取れて自分で身づくろいできるようになれば、あとは自分できれいにお手入れできます。小麦粉、うどん粉などはカビやダニの原因になるようですから、使うのは避けましょう。決して洗剤で洗ったりはせず、ベンジン、シンナー、アルコールの使用もしないようにしましょう。
* この方法はすずめSOSのかずあゆさんのアドバイスをもとにしています、その他多くの方からもアドバイスをいただきました。感謝!
ゴキブリホイホイ、ネズミホイホイなど粘り気がひどい場合
上記の方法で取れない場合、別の方法はいくつかあるようですが、いずれも野生に戻すまでに長期間の保護を必要としたり、野生に戻せなくなったりと、野鳥にとっては大変なストレスになってしまいます。この場合は鳥に詳しい獣医さんに相談して、実際に状態を見てもらいながら相談しましょう。
関連リンク
■ Timor
Dusky Sparrow>鳥の体の構造
文鳥を中心としたサイトですが、鳥の体についてとてもわかりやすくまとめられています
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