巣からヒナが落ちていたら
強風や台風のあと、あるいは木の剪定(せんてい)や建物の工事など、さまざまな理由で巣立ち直前のヒナや羽もはえそろってない丸裸のヒナが巣から落ちていることがあります。時にはカラスやヘビに襲われたりして、巣ごと落ちてしまうこもあります。巣から落ちた雛(ヒナ)だったら、すぐにでもなんとかしてあげなければ命にかかわります。巣をさがしたり、巣に返したりする前に、エサを補給してあげましょう。→レスキュー&育て方のトップぺージへ
ふ化して間もないヒナたちは長時間食べずには生きていられませんから、丸裸のヒナが「生きている」ということは落ちて間がないか、姿が見えなくても近くにいる親鳥がちょっと前までしっかりとエサをあたえていたという証拠です。野鳥の親鳥たちは自分のヒナの声をしっかりと聞き分けますから、下記のさまざまな方法を参考にして、なんとか親鳥たちに返してあげましょう。人が手を貸してあげなければ、親鳥がヒナを巣に戻すことはできません。
巣立ち前の幼い丸裸のヒナを人が飛べる状態まで育てるのは、とってもむずかしいことです。暑がったり寒がったりというしぐさも見分けにくいものですし、うまく育っても栄養不足や運動不足で野生にもどれない鳥になってしまうことも多いのです。とくにツバメのように速く飛び、飛びながらエサをとる種類の鳥は、家の中では満足な練習もできず、運動不足で飛べなくなるケースの方が多いのです。幼ければ幼いほど、ヒナは親にまかせるのが一番安全な保護の方法です。巣にもどせない場合でも、仮の巣を作ってあげるなど方法はありますから、あきらめずにがんばりましょう。
人が作るこうした簡単な巣のことは「簡易巣(かんいす)」と呼ばれ、以下の項目で説明してあります。すずめっ子クラブに相談のあった落巣ヒナの多くのケースで簡易巣の設置をお願いしてきましたが、兄弟たちと離れた場所に設置しても親鳥たちは喜んで子育てを続けています。
簡易巣の取りつけが終わったら、できるだけ早くその場を離れましょう。人間が近くにいては親鳥が近よれず、ヒナは飢え死にしてしまいます。心配なら、遠く(5mくらい)はなれた物かげなどにかくれて観察するようにしましょう。
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巣に戻す時の注意点
ヒナが巣ごと落ちていたら
強い風や雨の翌日などに野鳥の巣が落ちていることがよくありますし、落ちた巣がこわれてしまっていることもあります。巣がこわれていない場合は次項を参考にそのまま取りつけます。巣がこわれている場合は、次項を参考に巣を補強または新築して、親鳥に新しい巣での子育てをつづけてもらいましょう。たまに天敵におそわれて巣が落ちているケースもありますので、危険な場所に巣があると思える場合は次項にある安全な場所を選んで設置してあげましょう。
巣からヒナが落ちていたら
風雨や天敵のせいで、または親鳥が運ぶエサの奪い合いの最中にうっかり落っこちるヒナがいます。まだあまり動けないヒナでも、巣から落ちて急に明るくて広い場所に出たのがこわくて這って移動していることが多いので、広い範囲で巣をさがしてあげましょう。
とくにツバメの場合は小さな巣でたくさんのヒナが育ちますから、ある程度成長するとはみ出して落ちることが多いようです。小さな巣からはみ出すようにヒナたちが並んでいる光景をよく見かけますね。巣の下からヒナたちの姿が見えるようになったら、落ちてケガをしないように巣の真下から広めの範囲にクッションになるものを置いてあげましょう。
■ 近くに巣がひとつある場合
その巣から落ちた可能性が高いので、あたりがうす暗くなってからこっそり巣にもどしてあげましょう。明るいうちに戻そうとすると、おびえた他のヒナたちがあばれて、またもや落下する危険があります。また、中には弱って落とされるケースもあり、この場合は再び落とされることがよくあります。ですから、ヒナを巣に戻したら、念のために巣の真下から広めの範囲にクッションになるものを置いておきましょう。万が一、また落ちてしまった時のケガの予防になります。何度も落とされる場合は、次項を参考に簡易巣を作って安全な場所に設置し、親鳥に新しい巣での子育てをつづけてもらいましょう。
■ 近くに巣がいくつもある場合
巣がたくさんあってどれがそのヒナの本当の巣かわからないときには、無理をしてもどすのは危険です。巣から落ちて急に明るくて広い場所に出たのがこわくて這って移動してることもありますから、ヒナが落ちている場所の真上にある巣がヒナのいた巣とは限りません。それに子育て中の親鳥たちは自分のヒナでなければ巣から落としたり、つついてケガをさせたりすることがあります。こういう場合は無理に巣にもどさず、次項を参考に簡易巣を作って安全な場所に設置し、本当の親鳥に新しい巣での子育てをつづけてもらいましょう。
■ 巣にもどせない場合
巣が高いところにあってどうしても手が届かないときにも、もどそうとしたあなたが落ちてケガをしては大変です。巣の場所によっては巣をみつけても巣に手が入れられないこともあります。こんなときには、次項を参考に簡易巣を作って安全な場所に設置し、本当の親鳥に新しい巣での子育てをつづけてもらいましょう。
近くに巣がない
たまに丸裸のヒナが巣もない辺りに落ちていることがあります。まだあまり動けないヒナでも、巣から落ちて急に明るくて広い場所に出たのがこわくて這って移動していることがありますから、広い範囲で本当に巣がないかどうか、じっくりと探してあげることが必要です。もしも、巣が近くにある場合には、親鳥や兄弟鳥がさわがしく鳴いていることが多いので、しっかりと耳をすましてみましょう。
とくに高速で飛びまわるツバメの場合は人が育てるのはとてもむずかしく、将来は「渡り」というとても体力のいる大仕事も待ち受けているのですから、本当に巣がないかどうか、じっくりと探してあげることが必要です。
それでも巣がみつからない場合は、他の動物につれ去られる途中で落とされたと考えるしかありません。丸裸のヒナは自分の力で生きていくことはできませんから、近くに巣が見あたらず、親鳥の姿もみつからない場合はすぐに保護が必要です。こういう場合でも、巣が近くにある可能性はありますから、念のために以下の項目“自宅で保護する必要がある場合”も読んでおきましょう。
また、こういう場合はケガをしていることも多いですから、県の保護担当の窓口(県によって担当する課の名前がちがう)や保護施設に連絡して、どうしてあげたらいいか相談しましょう。ただし、県によっては素早く対応できないところもありますし、休日や時間外の場合もありますから、そういう場合は動物園や動物病院をさがしてお願いしてみましょう。電話やメールでの救護相談をしてくださる病院もありますから、利用しましょう。これらの連絡先を調べるには左メニューの保護施設・病院リストへどうぞ。
何度も落ちる場合
一度落ちたヒナを巣に戻しても、またすぐに落とされているケースがあります。ある程度ヒナが成長してくると巣はせまくなり、こういう状態での餌取り合戦のときに巣から落ちたり、巣立ちには早いのに兄弟の巣立ちに巻きこまれて落ちたりというケースがとても多いのです。それに、一度巣に戻してもまた落ちているというケースもよくあります。何度も落とされるような場合にはダメージが多き過ぎるということで、すずめっ子クラブでは簡易巣を作って返す方法を皆さんに試していただいていますが、ほとんどの場合はこの方法で子育てが続いています。
自宅で保護する必要がある場合
自宅で保護をすることになって、自宅から保護した場所があまり遠くない場合は、まだ親鳥がみつけてくれる可能性がありますから、窓の外にヒナの鳴き声がよく聞こえるように工夫してあげましょう。「まさか……」と思われるかもしれませんが、すずめっこクラブに相談があったケースの中にはおどろくほど離れた場所でも子育てが続いたケースもあるのです。親鳥の愛情に負けないように、私たちもあきらめないことが大事だと思います。
困った場所、危険な場所に野鳥の巣?
中に卵があったり雛(ヒナ)がいる巣を取り去ることは法律で禁止されていますが、困った場所、危険な場所に巣を作る野鳥は増えています。また、工事現場などでは「建物を撤去しようとしたら野鳥の巣があった」というケースも多いようです。住宅の増改築や建物の撤去の際にやむを得ず巣を移動させる必要があるケースもありますね。次項を参考に簡易巣を作って安全な場所に設置し、本当の親鳥に新しい巣での子育てをつづけてもらいましょう。
ただし、この場合は他にも注意が必要ですから、人も野鳥も地球の仲間の困った場所に野鳥の巣もかならず読んでおきましょう。
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簡易巣の作り方と取り付け方
簡易巣の作り方
ザルや、カップラーメンの容器の底に水抜きのちいさな穴をあけて利用します。巣ごと落ちてる場合は、これらの容器にそのまま巣を入れましょう。ヒナだけ落ちている場合は、容器の中に枯れ草やこまかくちぎったワラや新聞紙をこまかくさいたものをたっぷりつめて、お椀型の仮の巣を作ります。ヒナが3羽以上の場合には、これをそのまま次項の場所に固定します。
仮の巣を固定する際、ヒナや親鳥の体が触れる可能性がある範囲でガムテープを使用するのは止めましょう。翼や体の一部がガムテープにくっついてしまうと、これもまた命の危険に繋がります。テープ類は、設置時はきちんと貼られていても、時間がたつとはがれてくることも多々ありますから、使用しない方が安全です。
ヒナの数が1〜2羽の場合には保温も必要になります。野生では兄弟同士であたためあうものですが、1羽や2羽では体が冷えるだけ弱ってしまいます。目次の赤枠内丸裸のヒナのレスキューを参考に保温して、簡易巣を入れたあまり深すぎない箱ごと設置してあげた方が安全です。巣の形が違っても、親鳥たちはあまり気にしません。
ツバメの巣はよく落ちます。ツバメの相談をよく受けるという知り合いの大工さんは軒下に棚を作って、浅いかごに巣を乗せて固定するそうですが、これまでのところ100%の確率で子育てがつづいているそうです。壁に固定せず、つり下げたままでも良いそうです。スズメっ子クラブには、ガレージの中から外へなど少々場所を移しても子育てが続いたというたくさんのレポートが届いています。最後の項目までしっかり読んで、親鳥が来ることまで確認してあげましょう。
簡易巣を取りつける安全な場所
1. ヒナが落ちていた場所からできるだけ近い場所
親鳥にとってはエサを運ぶ巣が二つになるので、できるだけ近くが良い
2. 地上2mくらいの高さの安定のいい木の茂みや軒下
カラスなどに見つかりにくいようにできるだけ高い場所で、できれば雨にぬれない場所(地上近くに巣を作る種類の場合は地上近くに置く)
3. 人通りが少なく、ホコリをよけられる場所
子育て中の親鳥は神経質になっているので、できるだけ静かな場所を選ぶ。工事などのために移す場合は工事で出る塵芥などにも気をつける
■ 近くへの設置が難しい場合
いったん近めの場所に置いて親鳥に確認させて(エサを運んでいることを確認する)から次の場所へ移し、親鳥に確認させてからさらに次の場所へ移して設置する・・・という風に、親鳥を目的の場所まで誘導していく
特別な注意を必要とするケース
以下のような場合には特別な注意が必要です
■ 親鳥がヒナをみつけていない場合
親鳥がヒナをみつけてくれるまではこまめに世話をする必要がありますから、できるだけかくれて観察しやすい場所を選んで簡易巣を設置しましょう。定期的にエサを与え、雨の間や夜には室内に保護してあげて、早朝の鳥たちが活動を始める時間に外に出してあげます。親鳥と接触できるようになってから前項の1〜3の場所へ移してあげると良いでしょう。
■ 弱っていたりケガがある場合
外に出さず、窓辺近くに置いてあげれば網戸越しにでもヒナの声は外に届きますから、ヒナの鳴き声で親鳥がみつけてくれます。こうして親鳥がみつけてくれた後、網戸を細く開けたおいたら親鳥がエサをくわえて室内まで運ぶようになったというレポートも届いています。回復するまで親鳥と共同でヒナを育てることができれば、ヒナの将来のためには理想のケースです。ただし、天敵の侵入や直射日光など危険とも隣り合わせなので、見守れないときにはかならず窓を閉めておくなど十分に気をつけてください。
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親鳥は来ているの?
親鳥が簡易巣にエサを運んでいるかどうか、チェックしましょう
いったんエサを運びはじめたら、あとは続けざまに運ぶはずですから、できるだけ静かにこっそり観察しましょう。場所的に観察するのがむずかしい場合は、以下の点をチェックしましょう。
■ ヒナの鳴き声に注意しましょう
親鳥はヒナの声に反応して来るものですから、ちょっと可哀相ですが、お腹を透かし気味にしてたくさん鳴かせるように仕向けます。親鳥がエサを運んでくるとヒナは強く反応するので、鳴き声が一段と大きくなります。親鳥が巣から離れると、鳴き声はまた小さくなります。
■ 「そ嚢(そのう)」をチェックしてみましょう
「そのう」はヒナが食べたエサの色が透けて見えます。卵のエサは黄色、すり餌なら緑、昆虫ならその身体の色が見えます。1〜2時間おきの餌やリでしたら、次に餌を与える時には「そのう」はほぼぺしゃんこになっていると思いますから、「そのう」がふくらんでいたり、中にエサの色が透けて見えていたら、近い時間に親鳥がエサを運んで食べさせた証拠です。「そのう」については緑枠内野鳥のエサのあたえ方も読んでおきましょう。
■ 糞(フン)をチェックしてみましょう
ヒナの糞は薄皮におおわれてぷるんとしていて、指でつまんで持ちあげられます。これは、親鳥が糞をくわえて巣の外に捨てやすいようにこういう形状になっているそうです。このことを頭において巣をチェックしましょう。
ヒナは餌を与えるたびにぷるんとした糞をしますから、エサを与えて糞をする前に巣にもどしたとき(または巣にいる状態でエサをあたえたとき)には、次にのぞいた時に巣の中に糞があるはずです。もし、糞がなかったら、あるいは巣の周辺の地面などに新しい糞が落ちていたら・・・親鳥が世話をして、フンを巣の外に運び出して捨てたのでしょう(親鳥は飛びながら糞を捨てるので、かなり離れた場所に落とすこともあります)。
ツバメの場合は、ある程度育ったらヒナは巣からお尻を出して巣の外に糞をします。ですから、エサを与えて糞をした後に、巣の下に新しい新聞紙などをひろげておきましょう。エサを与えてもいないのに糞がたまっていたら・・・きっと親鳥が来ているのでしょう。
■ 糞(フン)の色をチェックしてみましょう
ヒナの糞は二色に別れています。片方は白色ですが、残る片方には食べたものの色が出ます。野菜やすり餌を与えると緑色になり、昆虫を食べさせると黒色になります。幼いヒナの場合、親鳥は昆虫や幼虫を運びますから、親を待つ間のエサをすり餌だけにしておくとわかりやすいと思います。すり餌しかあたえていないのに糞の中に黒い色がまざっていたら・・・きっと親鳥がエサを与えたのでしょう。
糞の白色の部分はオシッコです。白一色の糞だったらオシッコだけしか出ていないわけですから、親鳥はエサを運んでいないということになります。この場合はエサを補給してあげてください。
糞がベチャッとしてきたら、ヒナが弱ってきた怖れがあります。保温の温度を確認してあげましょう。
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