レスキュー&育て方

ヒナや成鳥のレスキュー

ほぼ羽が生えそろってきた頃、ほとんどの野鳥のヒナは巣立ちます。中にはツバメのようにしっかり成長してから巣立つ鳥もいますが、多くの鳥がまだ翼の下や首の周り、お尻のあたりにおハゲをかくして巣立ちます。ですから、このページを見ているあなたが保護したヒナは、巣立ちヒナか、もしくは巣立ちの直前のヒナということになります。これらについては次のコーナーでくわしく調べるとして、まずは救急処置をしてあげる必要があります。

野鳥は野生を生き抜く強くてたくましい生きものですが、その反面、人が保護して育てるにはあまりにもデリケートな生きものでもあります。成鳥が簡単に人に保護されるからにはなんらかの原因があるはずですし、ヒナの場合には親とはぐれてエサが不足するとあっという間に体力が落ちてしまいますし、どちらの場合も体温の低下は命に関わることです。さらに、人間に保護されて見なれない環境にいることは大きなストレスになりますから、保護した場合には保温、栄養補給をしてあげて、静かに落ち着かせることがなにより大事です。すぐにでも保温してあげる必要があります。

ここでは野鳥のヒナを中心に、保護した場合の救急処置についてまとめています。元気そうに見えても、決して油断はできません。頑張りましょう!

すぐに臨時の栄養補給保温と巣箱の準備

丸裸のヒナやぱっと見て地肌が透けて見えるヒナの場合は丸裸のヒナのレスキュー

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すぐに臨時の栄養補給

手早くすませ、できるだけ早く保温してあげましょう

・すぐに栄養補給を!
病院を探す間、保温などの準備をする間、エサを準備する間、腹ぺこのまま放っておくのは危険です。保護されるまでほとんどエサを口にしていない場合もありますから、すぐに栄養補給(えいようほきゅう)をする必要があります。以下のリストからすぐに用意できる補液(ほえき)を選んであたえておきましょう。以下のリストの中からすぐに用意できる補液(ほえき)をあたえます。これらは吸収が早いのですぐエネルギーになります。

まだハゲハゲ部分が目立つヒナにはスポイトで1〜2滴で充分です。全身が羽毛におおわれていたら、2〜3滴あたえます。水分の与え過ぎは幼い身体にはとても負担が大きいので、どうしてもエサを与えられない場合だけ補液に頼るようにしましょう。

・ポカリスエットやエネルゲンなどのスポーツドリンクや小児用リポビタンD
・豆乳
・人間の赤ちゃん用の育児用粉乳「ボンラクトi」
・砂糖(蜂蜜や果糖はさらに効果的)をぬるま湯にとかしたもの
・5%ブドウ糖液(ブドウ糖は薬局で買えます)
・生理食塩水(食塩の0.9%水溶液)
・なにもないときには新鮮な水

■ 補液(ほえき)のあたえ方
補給をあたえる場合には注意が必要です。

野鳥に水分あたえるときは、飲ませるものを人肌よりちょっと熱めにあたためて、スポイトや箸の先などで閉じたクチバシのはしっこに1滴つけると自分でなめとります。小鳥なら1〜2滴で充分です。大型の鳥の場合は身体の大きさによってもっとたくさんあたえますが、飲みたくなくなったらクチバシにつけても飲まなくなるそうです。

注意することは、水分を口の中に直接入れないこと。鳥は咽(のど)の手前に声門(せいもん)の穴があり、そこから気管、肺へとつながっています。水が気管の中に入ると死んでしまうケースもありますから、クチバシを開かせて水を流し込むようなことは絶対にしないでくださいね。

また、ヒナの時期には水分は餌に含まれるものからとる程度ですので、あたえ過ぎると下痢(げり)をします。下痢も幼い身体には大きな負担になりますから、緊急の時と餌をまったく食べられないとき以外、長くはあたえ続けないようにしましょう。もし、もっと欲しがるようだったら、少し時間をおいてからあたえましょう。


・衰弱(すいじゃく)がひどい時、エサを食べることができない状態
無理にエサを与えず、回復して食欲が出るまでは補液だけを2時間おきくらいにあたえて栄養補給をしましょう。回復に時間がかかりそうな時にはできるだけ早く病院に連れていきましょう。かならず人肌よりちょっとあたたかめの温度であたえます


・手元に臨時のエサがあればすぐにあたえましょう!
あなたが病院を探したり保温などの準備をする間、家族や近くにいる人がすぐに以下の餌を用意できるようなら、すぐにでも食べさせてあげましょう。餌を与える際の事故なども起きていますので、餌の与え方についてはメニュー緑枠内のエサや育て方は?を必ず読みましょう。

■ 昆虫(アオムシ、コオロギ、緑色のバッタなど
■ ミルワームおハゲが残る幼いヒナには頭をつぶしてあたえます)
■ すり餌(五分餌、七分餌、開封後から長くたっていないもの)
 人肌よりあたたかめの温度で、耳たぶくらいのやわらかさに練ってあたえます
■ ゆで卵の白身を裏ごしして(またはよくつぶして)、蜂蜜や砂糖を加えて練ったもの
 人肌よりあたたかめの温度であたえます
■ 鶏のササミ
 生のまま細長く裂いて、喉の通りをよくするためにかならず水に浸してからあたえます。虫に似ているのか、喜んで食いつきます。水に浸しても食べにくそうな場合は、無理にあたえない方が安全です。
■ 犬用固形ドッグフード
 ドッグフードをたっぷりのお湯でちょうど良い固さになるまでふやかします。これをしっかりしぼってからあたえます。子犬用のドッグフードは栄養価が高過ぎるそうですが、臨時であたえるのですから大丈夫でしょう。キャットフードについては調査中です。
■ 炊いたごはん粒をあたえるときは、かならずお湯できれいにぬめりをとってからあたえます。生米はあたえないでください。
■ パンは消化が悪く、そのう炎になるきけんがあるのであたえないでください
■ 粟玉は消化が悪のであたえないでください
■ 牛乳は消化できませんのであたえないでください


※注意 >かならずお読みください
ひきつづき餌をあたえる必要があったり、しばらく保護することになった場合
この項目に書いてある餌は臨時の餌です。ほんの2〜3日あたえるには問題がない餌です。それ以上の期間にわたって餌をあたえつづける必要がでてきた場合には与える餌が変わってきますので、救急処置、保温、レスキューチャートでみつけた処置が終わってから、かならずメニューの緑枠内のエサや育て方は?のコーナーをお読みください。このことについてはあとでちゃんと説明がありますので、まずはこのまま以下の項目に進みましょう。

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保温と巣箱の準備

幼いヒナや弱った野鳥の世話をするには、保温が一番重要と言っても良いでしょう。鳥の正常体温は41〜43度と高いので、なんらかの原因で保護されるということは体温が低下している危険性もあります。元気なように見えていても目に見えず弱っていることの方が多いですし、体温が40度を下回ると危険な状態になることが多いそうですから、かならず保温をしてあげましょう。雨にぬれている時には素手ではあまり触らないように気をつけながら、やわらかい布でそっとふいてからあたためます。


・保温する上での注意点

■ 人の手では温めない
寒そうな時は人の掌で温めようとつい思ってしまいますが、鳥の体温は40度以上もあるのに人の体温は25〜6度ですから、人の手があたたかく感じるのは逆に鳥の体温をうばっている証拠です

■ 人の体感温度を目安に管理しない
人の体感温度を目安に温度管理をするのも危険ですから、適度な温度を保てるように巣箱の中に温度計を入れておくと便利です。部屋全体を暖かくしておくのも大事ですね。室温は26度より下がらないように気をつけましょう。とくに夏場の冷房はよくありません。できるだけ風通しを良くして、冷房を使わない状態にしてあげましょう。保護をされるほど弱っている状態なのですから、夏場でも保温は必要です。鳥たちの体温は、人が高熱を発している時と同じだということを忘れないようにしましょう。

■ 脱水症状に気をつける
あまり暑すぎると体の水分が失われてしまいますから、乾燥は丸裸のヒナには大敵です。かといって水を入れたコップなどを置くのは、幼いヒナにとっては危険です。頭が入る程度のちいさな器でも、はずみで落ち込んで溺れたケースがあります。濡らしたオシボリなどを隅っこに入れておきましょう。そして、肌がひどく乾燥していないか、糞は水気がなく固くなっていないかなど、かならずチェックしましょう。

以前に目の前に巣ごと5羽のヒナごとスズメの巣が落ちてきたのですが、一時的に保護した巣の中はあたたかい・・・と言うよりむっと熱いほどでした。手許の資料には湿度については書かれてないのでネットで調べてみると、数字にばらつきはありますが大体、丸裸のヒナの場合は70〜80%、羽管*から羽が広がりはじめるころまでは50〜70%とありました。ほぼ羽が生えそろってからのヒナについても50〜60%と高めの湿度が好ましいという記事を多くみつけましたが、中には「60%を超えると個体によっては呼吸困難を引き起こす」ともありました。やはり様子を見ながらこまめに調節してあげるのが一番のようです。

■ 適温は決まっていません
保温の適温(てきおん)は保護したヒナの体調や怪我の症状によって、外気温によってちがいます。ですから、以下の温度を目安にして、保護した鳥にとってちょうど良い温度をみつけてあげましょう。翼を身体にぴったりつけてほっそりとなり、口を開けているようだったら暑すぎるサインです。翼を広げぎみにして風を入れている時もあります。体をふくらませてじっとしている時は寒がっているサインです。

弱ってあたためてもふるえているようであれば、温度を上げて様子を見ましょう。幼なすぎて、または弱りすぎて熱くて逃げることさえできないようであれば、こまめに温度チェックする必要があります。深夜に冷え込むような時は、電気スタンドなどで保温を補助してください。

*羽管(うかん)とは左上の写真のヒナの背中や翼にたくさん生えているトゲのようなもののことです。だんだん成長してくると、この一本一本の管が割れて、ふわふわの羽が広がってきます。


成鳥別の温度の目安(写真はスズメ)
丸々とふくらんでいたら?・・・寒がっています!

ふ化後十数日羽はほぼ生えそろって見えるが、翼の下やお尻はまだおハゲという頃
ようやく全身の羽がそろいはじめる頃、ようやく自分で体温の調節ができるようになってきます。そして、目立たない部分のおハゲをかくして、彼らは勇敢に巣立ちます。そして、初めての広い世界のかた隅で、寒さをしのぎながら飛べる日を待ちます。驚いたことに、このハゲハゲでもちゃんと飛べるところが、野生のすごさです。でも、親に会えない、なれない人間社会に迷い込んだというストレスもありますし、見た目よりも弱っていることが多いので、かならず保温してあげましょう。

保温目安:30〜32度

ふ化後十日前後おハゲもなくなり、全身の羽がすっかり生えそろったころから成鳥まで
大人の鳥は身体に触れてもひんやりしていて、羽毛が熱を逃がさない仕組みになっていますが、羽がふさふさ生えてぬくぬくとして見えるヒナの羽毛は、じつは赤ちゃんの肌着のように薄っぺらなもので、触れるとあたたかいのは体温が外に逃げている証拠です。でも、見た目よりも弱っていることが多いので、親に返すまでの間は保温してあげましょう。

保温目安:25〜28度
元気がない、弱っているという時には30度を目安に。


・どうやってあたためるの?
以下のような保温材をつかってあたためてあげましょう。でも、ちいさなヒナたちがヤケドをしないように気をつけてあげましょうね。

■ ひよこ電球・ペットヒーター
手もとにあれば保温には理想的ですが、わざわざ買いに走る必要はありません。他のものでも代用できます。

■ 電気スタンド
巣箱の上にタオルなどをかけて、その上から保温します。60ワットの電球をヒナの体から20〜30cmほど離して当ててあげます。温度計で温度チェックをして、距離を調整しましょう。ヒナの場合はできるだけ暗くしてあげることが大事です。弱った成鳥の場合は、ずっと明るくしておくことで夜の間もエサをついばむことができるので、体力の補強ができるそうです。鳥かごで保温をする必要がある場合もこの方法が便利です。

■ お湯を入れたペットボトル
タオルで包んで湯たんぽを作ってあげると巣箱の中全体が温まります。時間がたつと冷えてくるので、こまめな温度チェックが必要ですが、ヒナにとっては安全な方法です。

■ 電気アンカ
大急ぎであたためる場合には便利ですが、暑い時の逃げ場=涼しい部分をかならず作っておきましょう。弱っていて動けまわれない野鳥の場合は暑い時に自分で逃げられませんから、危険です自分で移動できるヒナに限って使い、暑すぎた時の逃げ場所もつくっておいてあげましょう。

■ 使い捨てカイロ
ホッカイロなどの使い捨てカイロは酸素を大量に消費して酸欠状態をつくるので、巣箱の中には絶対に入れないでください。

■ ホットカーペットの上に巣箱を置く?
巣箱ごと乗せてしまうと暖まりすぎた場合に逃げ場がなくなるので、半分乗せた状態にしてあげましょう。ただし、動けない野鳥の場合は危険です。

■ コタツに入れる?
半分だけコタツに入れるという方もよくいますが、サーモスタットで温度が安定しないのは弱っている場合や幼い場合には不必要に体力を消耗させることになります。


・巣箱はどうするの?
大きさは、保温材料が入って、暑いときに逃げ場もあるサイズと考えてみてください。鳥カゴが安心なように思えますが、弱っている場合には鳥かごは保温ができませし、閉じ込められる怖さから金網にぶつかってケガをすることもありますし、中にはショックやストレスで死んでしまう鳥もいます。野鳥たちはとてもデリケートなものです。

成長の場合: 成鳥は人にも閉じ込められることに慣れてないので、あずかって保護することはとてもむずかしいことです。それでも保護する必要がある時は、しばらくは暴れても安全なダンボールに外に飛び出さないような工夫をして入れてあげましょう。保温の必要がなく、鳥カゴに入れる場合はなれない環境にひどく怯えますから、必ずタオルなど通気性のよい布をかけて安心させるなど細心の注意が必要です。
ヒナの場合
・巣ごと落ちてきていたり、あきらかに巣から落ちたと思われるヒナであっても、育ち具合から考えると数日うちにでも巣立ちを迎えるヒナです。以下を参考に巣箱を作ってあげましょう。

1. 巣箱をつくる
あまり背の高くないダンボールが最適のようです。保温性が高く材質がやわらかいので、ケガが少ないです。発泡スチロールも良いのですが、私が育てたヒナは突ついて遊んでいました。まちがってのみ込んでしまうと危険ですね。巣箱の高さは立ったヒナの頭から10cmもあれば良いでしょう。羽がそろう頃のヒナは、よく巣箱から脱走しますので注意が必要ですが、この箱を抜け出すくらいのヒナでしたら、すぐに親もとに返してあげましょうね。

薄い紙箱やプラスチックケースは素材としてあまりおすすめできません。薄い紙箱は保温力が劣ります。プラスチックケースは羽がはえそろった頃のヒナには通気が悪すぎます。鳥かごは保温がしにくい上、保護したばかりで人になれていないヒナの場合、おびえてぶつかるなどしてケガの元になります。翼やクチバシはまだやわらかいので、ちょっとしたことがケガにつながります。用心しましょう。

2. 敷物を敷きつめる
平たい床では足を痛めてしまうことなどがありますから、巣箱の底には藁や新聞紙を細かく裂いたものを厚めに敷きつめます。新聞紙は保温力が高く、糞(フン)の始末にも便利です。ティッシュも良いですが、足元が安定しないうちはからみつくことがありますから注意も必要です。タオルを敷くと爪が引っ掛かって足をねんざしたり折ったりすることがあります。

3. 止まり木をつける
ヒナがしっかり握れるほどの太さの止まり木を差し込んでおきましょう。とまれるかどうかわからない場合にも、止まり木をつけておきましょう。赤ちゃんのように見えても、羽根がはえそろっていて自分の足で立てるほどに成長していれば、案外とまれるものです。

4. 保温材は直接体にあたらないように
くれぐれもヒナがヤケドをしないように気をつけましょう。熱すぎたときのために巣箱の中にあまり温もらない逃げ場もつくっておいてください。温度もこまめにチェックして、ヒナの様子を見ながら調整してあげましょう。

5. 巣箱の上に布をかける
箱の上には保温のためと安静にしてあげるためために、タオルなど通気性の良い布をかけてうす暗くします。通気のために、上からかぶせた布のはしっこを一部分、かならず開けておきましょう。布は真っ黒な布よりも、昼夜の明るさの差が見える布にしましょう。温度はこまめにチェックして、ヒナの様子を見ながら調整してあげましょう。夜に冷え込みが気になるような時には、電気スタンドでタオルの上から保温したり、アンカやホッカイロで保温を補助しましょう。また、直射日光があたらない日陰においてあげましょう。

4. 安静にする
保護されるような野鳥は少なからず弱っていたり、人間に怯えていたりしますから、できる限りうす暗く静かにして安心させることも大事です。しばらく保護する必要がある時は、自分で巣箱を脱走する頃まではうす暗い状態を保ち、静かな場所においてあげます。

あまりヒナにさわらないこと、あまりちょこちょこのぞかないことも大事ですね。特に目が開いていて親の顔を知っているヒナは、人間をこわがって声も出せないことがあります。そんな時にあまりさわられるとストレスで弱ってしまいます。かわいいからついのぞいて見たくなりますけど、できるだけ静かにそっとしておいて、だんだんなれてくるのを待ちましょう。エサや補液を与えるときは箱の周りであらかじめ音を立ててからタオルをとりましょう。急に驚かすのはよくありません。

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