レスキュー&育て方

丸裸のヒナのレスキュー

丸裸のヒナや、ストローのような羽管(うかん)からちらほら羽らしきものが見えてきた程度の幼鳥は、巣の中で兄弟が寄り添って温め合いますが、巣から落ちてしまうとその兄弟もいません。いきなり吹きっさらしの広い場所に出て、体温は一気に低下しているはずです。体温の低下は命に関わることですから、すぐにでも保温してあげる必要があります。

さらに、落ちた時のダメージや恐怖心もある上、突然環境が変わったことへのストレスもありますから、できるだけ静かに対応してあげることも大事です。餌の不足も、こうしたダメージをさらに深めることになります。まずは以下の項目をしっかり読んで、救急処置をしてあげましょう。

すぐに臨時の栄養補給保温と巣箱の準備

翼の下はおハゲでも、ぱっと見で羽が生えるそろっていたらヒナや成鳥のレスキュー

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すぐに臨時の栄養補給

手早くすませ、できるだけ早く保温してあげましょう

・すぐに栄養補給を!
病院を探す間、保温などの準備をする間、エサを準備する間、腹ぺこのまま放っておくのは危険です。保護されるまでほとんどエサを口にしていない場合もありますから、すぐに栄養補給(えいようほきゅう)をする必要があります。以下のリストからすぐに用意できる補液(ほえき)を選んであたえておきましょう。以下のリストの中からすぐに用意できる補液(ほえき)をあたえます。これらは吸収が早いのですぐエネルギーになります。

ふ化して間もない赤むけのヒナにはスポイトで1〜2滴で充分です。水分の与え過ぎは幼い身体にはとても負担が大きいので、どうしてもエサを与えられない場合だけ補液に頼るようにしましょう。また、人工のドリンク類は刺激が強すぎるようです。

・ポカリスエットやエネルゲンなどのスポーツドリンクや小児用リポビタンDの50%液
・豆乳
・人間の赤ちゃん用の育児用粉乳「ボンラクトi」
・砂糖(蜂蜜や果糖はさらに効果的)をぬるま湯にとかしたもの
・5%ブドウ糖液(ブドウ糖は薬局で買えます)
・生理食塩水(食塩の0.9%水溶液)
・なにもないときには新鮮な水

■ 補液(ほえき)のあたえ方
補給をあたえる場合には注意が必要です。

野鳥に水分あたえるときは、飲ませるものを人肌よりちょっと熱めにあたためて、スポイトや箸の先などで閉じたクチバシのはしっこに1滴つけると自分でなめとります。小鳥なら1〜2滴で充分です。大型の鳥の場合は身体の大きさによってもっとたくさんあたえますが、飲みたくなくなったらクチバシにつけても飲まなくなるそうです。

注意することは、水分を口の中に直接入れないこと。鳥は咽(のど)の手前に声門(せいもん)の穴があり、そこから気管、肺へとつながっています。水が気管の中に入ると死んでしまうケースもありますから、クチバシを開かせて水を流し込むようなことは絶対にしないでくださいね。

また、ヒナの時期には水分は餌に含まれるものからとる程度ですので、あたえ過ぎると下痢(げり)をします。下痢も幼い身体には大きな負担になりますから、緊急の時と餌をまったく食べられないとき以外、長くはあたえ続けないようにしましょう。もし、もっと欲しがるようだったら、少し時間をおいてからあたえましょう。


・衰弱(すいじゃく)がひどい時、エサを食べることができない状態
無理にエサを与えず、回復して食欲が出るまでは補液だけを2時間おきくらいにあたえて栄養補給をしましょう。回復に時間がかかりそうな時にはできるだけ早く病院に連れていきましょう。かならず人肌よりちょっとあたたかめの温度であたえます


・手元に臨時のエサがあればすぐにあたえましょう!
あなたが病院を探したり保温などの準備をする間、家族や近くにいる人がすぐに以下の餌を用意できるようなら、すぐにでも食べさせてあげましょう。餌を与える際の事故なども起きていますので、餌の与え方についてはメニュー緑枠内のエサや育て方は?を必ず読みましょう。

■ 昆虫(アオムシ、コオロギ、緑色のバッタなどちいさめのもの
■ ミルワーム丸裸のヒナには中身をしごき出して中身だけを、羽が開いてきたら頭をつぶして、または切りとってからあたえます)
■ すり餌(五分餌、七分餌、開封後から長くたっていないもの)
 人肌よりあたたかめの温度で、耳たぶくらいのやわらかさに練ってあたえます
■ ゆで卵の白身を裏ごしして(またはよくつぶして)、蜂蜜や砂糖を加えて練ったもの
 人肌よりあたたかめの温度であたえます
パンやはごはん粒消化が悪く、そのう炎になるきけんがあるのであたえないでください
■ 粟玉は消化できませんのであたえないでください
■ 牛乳は消化できませんのであたえないでください


※注意 >かならずお読みください
ひきつづき餌をあたえる必要があったり、しばらく保護することになった場合
この項目に書いてある餌は臨時の餌です。ほんの2〜3日あたえるには問題がない餌です。それ以上の期間にわたって餌をあたえつづける必要がでてきた場合には与える餌が変わってきますので、救急処置、保温、レスキューチャートでみつけた処置が終わってから、かならずメニューの緑枠内のエサや育て方は?のコーナーをお読みください。このことについてはあとでちゃんと説明がありますので、まずはこのまま以下の項目に進みましょう。

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保温と巣箱の準備

丸裸のヒナや産毛が生えた程度のヒナの世話をするには、保温が一番重要と言っても良いでしょう。鳥の正常体温は41〜43度と高く、羽が生えそろうころまでは自分で体温調節もできません。保護されるほど弱っている野鳥や、裸のまま急に広い世界に放り出された幼いヒナは、体温の低下で一気に体力をなくしてしまいます。元気なように見えていても目に見えず弱っていることの方が多いですし、体温が40度を下回ると危険な状態になることが多いそうですから、かならず保温をしてあげましょう。ぬれている時にはやわらかい布でそっとふいてからあたためます。


・保温する上での注意点

■ 人の手では温めない
寒そうな時は人の掌で温めようとつい思ってしまいますが、鳥の体温は40度以上もあるのに人の体温は25〜6度ですから、人の手があたたかく感じるのは逆に鳥の体温をうばっている証拠です

■ 人の体感温度を目安に管理しない
人の体感温度を目安に温度管理をするのも危険ですから、適度な温度を保てるように巣箱の中に温度計を入れておくと便利です。部屋全体を暖かくしておくのも大事ですね。室温は26度より下がらないように気をつけましょう。とくに夏場の冷房はよくありません。できるだけ風通しを良くして、冷房を使わない状態にしてあげましょう。保護をされるほど弱っている状態なのですから、夏場でも保温は必要です。鳥たちの体温は、人が高熱を発している時と同じだということを忘れないようにしましょう。

■ 脱水症状に気をつける
あまり暑すぎると体の水分が失われてしまいますから、乾燥は丸裸のヒナには大敵です。かといって水を入れたコップなどを置くのは、幼いヒナにとっては危険です。頭が入る程度のちいさな器でも、はずみで落ち込んで溺れたケースがあります。濡らしたオシボリなどを隅っこに入れておきましょう。そして、肌がひどく乾燥していないか、糞は水気がなく固くなっていないかなど、かならずチェックしましょう。

以前に目の前に巣ごと5羽のヒナごとスズメの巣が落ちてきたのですが、一時的に保護した巣の中はあたたかい・・・と言うよりむっと熱いほどでした。手許の資料には湿度については書かれてないのでネットで調べてみると、数字にばらつきはありますが大体、丸裸のヒナの場合は70〜80%、羽管*から羽が広がりはじめるころまでは50〜70%とありました。ほぼ羽が生えそろってからのヒナについても50〜60%と高めの湿度が好ましいという記事を多くみつけましたが、中には「60%を超えると個体によっては呼吸困難を引き起こす」ともありました。やはり様子を見ながらこまめに調節してあげるのが一番のようです。

■ 適温は決まっていません
保温の適温(てきおん)は保護したヒナの体調や怪我の症状によって、外気温によってちがいます。ですから、以下の温度を目安にして、保護した鳥にとってちょうど良い温度をみつけてあげましょう。翼を身体にぴったりつけてほっそりとなり、口を開けているようだったら暑すぎるサインです。翼を広げぎみにして風を入れている時もあります。体をふくらませてじっとしている時は寒がっているサインです。

弱ってあたためてもふるえているようであれば、温度を上げて様子を見ましょう。幼なすぎて、または弱りすぎて熱くて逃げることさえできないようであれば、こまめに温度チェックする必要があります。深夜に冷え込むような時は、電気スタンドなどで保温を補助してください。

*羽管(うかん)とは左上の写真のヒナの背中や翼にたくさん生えているトゲのようなもののことです。だんだん成長してくると、この一本一本の管が割れて、ふわふわの羽が広がってきます。


成鳥別の温度の目安(写真はヒヨドリ)
ふ化直後

ふ化直後の丸裸のヒナの場合
保温の目安:38度

ふ化後十数日

羽管が半分位開く頃までは
保温目安:35〜38度

ふ化後十日前後

羽管が半分位開いた頃から
保温目安:32〜35度

巣ごと落ちていて兄弟とあたため合える場合は35度前後 同左の場合は32度前後


・どうやってあたためるの?
以下のような保温材をつかってあたためてあげましょう。でも、ちいさなヒナたちがヤケドをしないように気をつけてあげましょうね。

■ ひよこ電球・ペットヒーター
手もとにあれば保温には理想的ですが、わざわざ買いに走る必要はありません。他のものでも代用できます。

■ 電気スタンド
巣箱の上にタオルなどをかけて、その上から保温します。60ワットの電球をヒナの体から20〜30cmほど離して当ててあげます。温度計で温度チェックをして、距離を調整しましょう。ヒナの場合はできるだけ暗くしてあげることが大事です。

■ お湯を入れたペットボトル
タオルで包んで湯たんぽを作ってあげると巣箱の中全体が温まります。時間がたつと冷えてくるので、こまめな温度チェックが必要ですが、ヒナにとっては安全な方法です。

■ 丸裸のヒナには危険な保温の仕方
まだ動けまわれないヒナの場合は暑い時に自分で逃げることができませんから、以下の保温材を使う場合には特別に注意が必要です。
・電気アンカ
 暑い時の逃げ場=涼しい部分をかならず作っておきましょう。
・使い捨てカイロ
 ホッカイロなどは酸素を大量に消費して酸欠状態をつくるので、巣箱の中には絶対に入れないでください。
・コタツ、ホットカーペット
 巣箱を半分だけ乗せる、入れるという方が多いですが、ヒナが自分で暑さから逃げられたとしてもサーモスタットの作用で温度が安定しないので、不必要に体力を消耗させます。いずれも幼いヒナには危険です。


・巣箱はどうするの?
・巣ごと落ちてきて、巣が使える状態であればほかに巣箱を用意する必要はありません。[2]からお読みください。
 ただし、たまにダニなどついていることがありますので、室内にもち込む時には注意しましょう。また、親鳥にもどす場合には必要ですから、すてたりこわしたりはしないようにしましょう。

・ヒナだけが落ちていた場合は、以下の要領で臨時の巣を作ってヒナを入れます。丸裸のヒナの場合はあまり通気性が良すぎるのも良くないということを頭においておきましょう。

1. ちいさな巣箱をつくる
ヒナだけが落ちていた場合は、臨時の巣を作ってヒナを入れます。丸裸のヒナの場合はあまり通気性が良すぎるのも良くないそうですから、あればちいさなプラスチックケースが最適です。お椀型のカップ麺の容器やちいさめで浅いダンボールも保温性も高く安心です。鳥かごに入れるのは厳禁です。

平たい床では足を痛めてしまうことなどがありますから、底に(わら)や新聞紙、なければティッシュを細く裂いたものを厚めに敷きつめ、中央から外側へ押しつけるようにして半円形の巣を作ります。新聞紙は保温力が高く、糞(フン)の始末にも便利です。タオルでは爪が引っ掛かって足をねんざしたり折ったりすることがありますので、おすすめしません。

2. 巣を保温できる大きめの箱に入れる
プラスチックケースの中に安全な状態で保温材を入れることができれば、[3]からお読みください。
別のダンボール箱の中に保温材を入れわきにカップ麺の容器やちいさめのダンボールの巣を入れます。くれぐれもヒナがヤケドをしないように気をつけましょう。温度もこまめにチェックして、ヒナの様子を見ながら調整してあげましょう。

3. 巣箱の上に布をかける
箱の上には保温のためと安静にしてあげるためために、タオルなど通気性の良い布をかけてうす暗くします。通気のために、上からかぶせた布のはしっこを一部分、かならず開けておきましょう。布は真っ黒な布よりも、昼夜の明るさの差が見える布にしましょう。夜に冷え込みが気になるような時には、電気スタンドでタオルの上から保温したり、アンカやホッカイロで保温を補助しましょう。また、直射日光があたらない日陰においてあげましょう。

4. 安静にする
巣から落ちるということでなんらかのダメージは受けているはずですし、人間に怯えていたりしますから、できる限りうす暗く静かにして安心させることも大事です。目が開いていて親の顔を知っているヒナは、人間をこわがって声も出せないことがあります。そんな時にあまりさわられるとストレスで弱ってしまいます。かわいいからついのぞいて見たくなりますが、できるだけ静かにそっとしておいてあげましょう。エサや補液を与えるときは箱の周りであらかじめ音を立ててからタオルをとりましょう。急に驚かすのはよくありません。

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