種から育ててみよう!

ガーデニングの醍醐味は種まきにあり!・・・庭守RITZはそぅ思っています。ちいさな双葉を思い描きながらの苗床作り、まだかまだかと水やりを続ける日々は恋文でも待っているような気分です。そして、自分のまいた種が、まるで小さな林のように芽吹いているのを見るのは春一番の歓びであり、深まりゆく秋の慰めでもあります。自分でまいて移植したり定植したりと手をかけて育てた植物には、やはり愛情の度合いも違ってきますね。
ようやく発芽が始まると、あっという間に発芽してにょきにょきのびる元気な種、双葉が出たのになかなか本葉が見えてこない思わせぶりな種、一年以上もかけて一本、また一本と発芽するのんびり屋さんの種と、いろんな個性に出会えます。吹けば飛ぶような微細な種から握りこぶしほどもあるでっかい種、双葉の形も様々です。これは園芸店で売っている「苗」になる前にしか味わえない楽しみです。
ちょっとした手間をかける時間さえあれば誰にでもできます。今はジフィーなど便利なものがありますから、ちいさなテーブルの上だけでも種まきを楽しむことができます。お彼岸の前後は種まきの季節・・・あなたも種から育ててみませんか?

種まきの用土については『ホクホクの土作り』を参照してください
苗床の虫除けについては 『困った虫たちに』を参照してください


種をまく
  移植する  低温処理

種をまく

種子消毒と土壌消毒
園芸店などで買った種はほとんどのものが種子消毒を終えています。自家採取の種は土壌伝染病や斑点細菌病などの予防のためにも、米の醸造酢(加工酢は使わない)に20分以上浸けて種子消毒をします。消毒後は日陰で30分ほど干してから蒔きます。お酢での殺菌は土中の害虫からも種を守ってくれますし、しみ込んで栄養分にもなります。
まき土は新たに芽を出す植物にとっては産着のようなものですね。できるだけ新しく清潔な用土を使いましょう。新しい土でない場合は太陽熱を利用して消毒しましょう。日当たりの良いところにビニールを敷き、土を約1cmの厚さに広げて日光消毒、途中二回ほど混ぜ返します。殺菌と同時に土中の窒素が増え、焼き土と同じ効果があるそうです。一日で良いので頑張りましょう。

種まきの方法
種まきの様子直まき
庭や花壇に直接種を撒いて育てます。カモマイルやマリーゴールドのように短期間に成長して収穫するものや、フェンネルやボリジのように直根性で移植を嫌うものはじか撒きします。種をまく前にやはりよく耕しておくことが大事です。
容器まき
育苗箱や平鉢に撒き、庭や花壇に移植して育てる方法です。移植ができる種類や種が細かいもの、たくさんの苗が欲しい場合は容器まきにします。まき土は有機質(腐葉土やピートモス)1、無機質(赤玉(小)やバーミキュライト2の割合で作りますが、混ぜ合わせた土は握った時に弾力を感じる程度に湿らせます。土づくりが面倒だという方には種撒き専用素材のピートバンが便利です。
中には移植を嫌うタイプの植物もあるので、そうしたものは移植しないで良いように大きめのポリポットに直接数粒づつ蒔きます。ジフィーセブンなどもそのまま育てて定植できるので便利です。移植できるタイプはやはり移植して、丈夫に育てましょう。

種のまき方
均一に、しかも間が空くようになるべく薄まきにします。まき終わったら種が隠れる程度に目の細かい土で薄く覆います。ラベンダーは覆土がなければ発芽しないのでこころもち厚めに覆土します。大きな種は浅めに埋め込みます。最後に種が流れないように静かに灌水します。
微細な種の場合
二つに折りにしたハガキに種を乗せて下から軽く指で突つくとうまくまけます。覆土の代わりにガラスや薄くワラをかぶせます。私はパーミキュライトを味噌こしですり潰してかけています。最後に鉢底から水を吸わせます。上から水をかけると微細な種子は流れてしまいます。

発芽率を上げる
発芽率をあげるにはこんな方法もあります。種を水に浸けっぱなしにしておいて、少し根が見えたものから順に庭や容器にまいていくという方法で、間引きによる損失が少なくなります。ただし、水が濁ったら取り替えます。この方法はベジタブルハーブ造りで役に立っています。

種まき後の管理
真夏を除いては風通しと日当りの良い場所、夏はなるべく涼しい場所、冬は霜が直接当たらない棚下などで管理します。発芽までは乾かさないようにしっかりと灌水します。「乾燥させないように新聞紙を乗せておく」と本に書いてありますが、気付かないうちに発芽して、せっかくの新芽がひょろひょろの弱い苗になることがあるので、毎日チェックできない方にはお薦めしません(経験者談)。
発芽したら徐々に日向に出し、たっぷりと陽に当てて育てます。また発芽するまで肥料は与えませんが、発芽2,3日後とその5日後くらいに規定の倍量の水で薄めた液体肥料を与えると、より元気に成長します。酢農薬を与えると病害虫予防になります。また、双葉を食い逃げするナメクジの害にも注意が必要です。
発芽までは早いもので3〜4日、一般的には2週間程度。中にはローズマリーのように1〜2年後に芽を出すもの、ラベンダーやセージのように一斉に発芽しないものもあるので、気長にいきましょう。

間引きと活用
種を蒔くと時には百を超える双葉が顔を出すこともあります。せっかく育った苗たち・・・間引きはなかなか勇気のいる作業ですが、丈夫な苗を作るためには混み合った部分やひょろひょろと弱いものの間引きが必要になってきます。混み合ったままでは共倒れ・・・どれも育ちきれず、ひ弱で病気や虫に狙われることになります。
食用ハーブや野菜の場合はスプラウト(新芽野菜)として美味しくいただきましょう。植物の種子には生育に必要な栄養素がぎっしり貯えられてい ます。発芽したてのハーブや野菜は、その栄養素やエネルギーをたっぷり含んだ自然界の贈り物です。 最近はよく出回るようになりましたね。ミントやルッコラなど、サラダの上にふんわり飾ると可愛いものです。箱蒔きの場合には移植の残りをそのまま箱で育て、ちょこちょこ食べていきます。ちいさなガラスの器などでの水栽培も楽しいものです。かわいくって食べられなくなっちゃいますが……。
食べられない苗は大問題です。捨てることなんてできない・・・と、山盛りのポリポット苗を作っては友人達に押し付けたり、養老院やいろいろな施設へプレゼントしたり、近くのお店でプレゼント用に使ってもらったりと走り回りましたが、結局は時間もお金がかかることになりました、とほほ。。。

このページのトップに戻る

移植する

移植用土造り
育苗箱や平鉢、ピートバンに蒔いた種が発芽して、双葉の間に本葉がちらりと見え始めたら双葉移植をして、定植できる大きさになるまで育てます。双葉移植をする場合はポリポットに一株づつ植え付けると定植が楽になります。また、ポリポットの壁が根の進路を阻むことで根がまとまり丈夫に育つそうで、たぶん生存競争の予行演習のようなものではないでしょうか?種もたくさん蒔く程発芽率が上がると聞きますから。
移植用土はやはり水はけの良い清潔な土を使いますが、ここでは有機質素材対無機質素材の割合を5対5で土造りをします。肥料が必要だとも言われますが、効き過ぎては苗が軟弱になるので私は加えません。たっぷり水をかけて、移植を始める数時間前に用土を暖かい場所に出し、苗を温度の低い場所に置いておきます。4〜5℃程度の温度差があると苗が活着しやすくなります。

移植の仕方
本葉が完全に育ってない頃には種子根が一本深く伸びています。この種子根の状態の頃が移植が簡単です。種子根は少々切れても心配はありません。逆に、根が切れることでヒゲ根の発生を促し根が張るので丈夫に育ちます。本葉が大きくなってくるとヒゲ根も育って移植がしにくくなります。ですから、移植は双葉の間に本葉がちらりと見え始めた頃がベストです。
移植は割り箸の先を細めに丸く削ったもの(ピンセットも可)を使います。まず、苗の根周りを軽くほぐしておき、割り箸で茎をはさんで苗をそっと抜き取り、移植用土の中へ引きずり入れるように植えます。根が土の中に入ってるのを確認して、双葉が土に付かないように周りの土を外側(根に遠い方向)から根に向かって押さえます。最後に全体を軽く押さえて、細かい目のジョーロで底から水がしみ出すまでたっぷりと水をやります。水やりで双葉が土に付いたら、箸を使って土から離してやります。
双葉移植の後に再度移植が必要なものは、ヒゲ根もたくさん出て移植がしにくくなります。この場合は植え付け穴をあけておいて、そこに根を入れ込むように移植します。長く伸びた根はハサミで切り取ってから植え付け、外側から押さえてたっぷりと水やりをします。根は葉茎の長さと同じくらいで大丈夫です。

移植後の管理
発芽の様子移植後は苗が活着するまで半日陰で管理し、土の表面が乾くまでは水をやりません。2〜3日ほど置いて、苗が元気なようだったら徐々に日差しに慣らし、慣れたら十分に光りに当てて育てます。この頃から「水やりは表面が乾いてから、鉢の底から水が出るまで」を基本とします。水を溜めた受け皿の中で育てるやり方は苗が甘えん坊に育ち、ちょっとの水切れで枯れる弱虫に育ちます。
もし水切れを起こして苗がぐったりしていたら、慌てて水やりをせずに、まず日陰に取り込んで土の温度を下げます。土の温度が下がってから水の中に半分沈めるようにしておくと元気を取り戻します。手後れでさえなければ……。。

定植
苗箱やポリポットの下からちょろりと根っこが出るようになったら定植の時期です。しっかりと土造りをして植え付けましょう。根周りの土を崩さないように植え付けますが、少々根が切れても心配はいりません。定植が遅れて、ポットや苗箱の中に根がびっしり絡まってものは下の方を少しほぐして、伸び過ぎた根を切ってから植え付けます。
ただし、移植を嫌うものはできるだけ根に触れないように、根を切らないようにします。少々根が絡まっていても決して切ってはいけません。

このページのトップに戻る

低温処理

種の低温処理
植物の中には寒さにあわないと花を咲かせないものがあります。チューリップ、シクラメン・・・多くの秋撒きの植物や秋植え球根などは自然のなかで一定期間の冬の寒さにあって初めて花芽を作り、花を咲かせます。このような植物を秋も早いうちから室内や温室に取り込むと、花芽の発育不全や花芽がまったく付かなかったりすることがあります。暖冬の後には花が少ないという植物もたくさんありますよね。
種も同様で、秋撒きの種の中には寒さにあわないと発芽しなかったり、発芽しても花が咲かなかったりするものがあります。種を採ったあと袋詰めにされて園芸店の中でぬくぬくとしていては寒い思いもできませんよね。こういった種は種をまく前に「低温処理」を必要とします。低温処理とは人工的に低温にあわせることです。
低温処理を必要とするハーブで代表的なのはラベンダー、アンジェリカ、スウィートバイオレット(自家採取の場合は採ってすぐにまく)などです。

低温処理の仕方
ラベンダーなどは種を一昼夜水に浸け(水が濁ったら取り替える)、その後、濡らした布やティッシュに包みポリ袋に入れて冷蔵庫で一週間ほど保管し、それから種まきすると休眠から覚めて発芽します。ラベンダーには覆土が必要です。私はパーミキュライトをすり潰してかけています。

《庭守RITZ流
小さめの容器(ピートバンなど)にラベンダーの種をまき、覆土して充分に潅水しておきます。それを容器ごときっちりとポリ袋で包んでゴムなどで密閉し、冷蔵庫内で一ヶ月ほど保管します。たまに乾燥していないかチェックしますが、結構乾いていないものです。冷蔵庫の温度はできれば0度くらいが良いそうですが、私は4度の冷蔵庫に入れて結構な発芽率を確保しています。その後、外に出してあたたかさに触れると発芽するという仕組みです。

《低温処理の結果報告
特に発芽率の悪いトゥルーラベンダーの結果報告です。低温処理をしなかったものは半袋で4株しか発芽せず、ほとんどが花も咲かずに枯れてしまい、ようやく花を付けた二株も花のあとすぐに枯れてしまいました。低温処理をしたものは発芽率も高くなり、半袋から20株近くできました。里子に出したものも含めて順調な成長振りを見せています。発芽だけでなく、その後の花付きなどにもおおいに影響があるようです。

このページのトップに戻る


コーナーTOPへ 次へ