エピソード2：大空を目指して

●６月１２日(月) 曇（１１日め）ヨーダRITZの雄叫び

早朝、飛ぶことを覚えたC3POとR2D2は餌にも眼をくれず（C3POはちょっとくれた）一目散に窓辺へ飛んで行った。飛べないうちはしきりに首を伸ばして覗いていた世界が目の前にど〜んと開けるのだから仕方のないことかもしれないが、ちょんの字に比べるとやたら積極的であまり脅える様子もない。しかし、なにしろ初めてのこと。ガラスにぶつかり、墜落することしきり。怪我がひどくなるのでは……と気になって病院に電話で尋ねたところ、診てくれると言うので連れて行った。とても親切な先生だ。（ちなみにこの病院での診察は無料！）
診察の結果、C3POは骨が固まりつつあるので片足にはなるが、他に心配はないとのことで一安心。
問題はR2D2。 R2D2は足の骨折だけではなく、落巣の時に頭を打ったようでバランス感覚がなくなっているという悲惨な結果だった。それでも、「ぜんぜん使えなかった指に力が入るようになりました！」「バランスは悪いけど、飛ぶことはできます！」と訴えたが、「よくここまで育てたね」と慰めてくれただけで、希望的な意見は聞くことができなかった。餌も、この状態では自力で食べることは無理だろうと……。。
ショック状態で帰ってきたものの、RITZの心配をよそに元気一杯のちび共は飛び回り、でっかい糞を転がし、大きな元気な声で空に向かってさえずる。自分の将来にこれっぽっちの疑問も抱いていない彼らをずっと眺めていると、むくむくと、なんだか希望が湧いてきた。彼等が頑張っているのに、ヨーダ＠RITZが挫ける訳にはいかないじゃないかっ!!! これまでだってドクターを驚かせてきたのだから、これからも二羽と家族で頑張って、奇跡でもなんでも起こしてやろうじゃないか!!! よ〜し、ちび共、頑張るぞーーー!!!

●６月１３日(火) 晴（１２日め）ひょうきんC3PO

餌の時間は自力で餌を食べられないR2D2に係りきりになるので、まずは大口開けて準備万端の腹ぺこC3POに食べさせる。C3POは餌やり用のストローまでも呑み込みそうな勢いでガツガツ餌を食べると、R2D2の羽根で口を拭き、とっとと窓辺へ行ってしまう。C3POにとっての私は自動餌やり機のようなもので、なかなか懐かず、顔を見ると威嚇してくる。淋しいけれど、これは良い徴候だとずっと思っていた。。
だが……じきにおかしなことを発見した。なんと、疲れてベッドにもぐり込んでいる時に、掌にもぐり込んでくるのだ。で、顔を見せてみると・・・威嚇する。なんとまぁ、ヨーダ・RITZの手首から先にだけしっかり懐いていたのである。窓辺で遊んでいる時に、ソファーの陰から手だけを出すと走り寄ってきて口を開け、指をつんつん餌をねだる。ぬっと顔を出すと大きな口を開けて威嚇！する。これは“刷り込み”か……？
そんなC3PO、今日になってようやくヨーダ・RITZの手と顔のつながりに気付いたらしい。呼びながら顔を見せると顔面に向かって飛んでくるようになった。ちょんの字と同様、ヨーダ・RITZの鼻に止まろうとする。。私の鼻は止まり木かぁ〜!? でも、ちょっと嬉しい。

●６月１４日(水) 晴（１３日め）頑張るR2D2

R2D2のバランス神経の損傷は日に日にひどくなっていく。かろうじて真直ぐに立つことはできるが、動こうとすると転がってしまう。転がると自力では起き上がれない。行きたい方向に行けず、飛んでいる最中にもバランスが崩れ、着地の頃には背面飛びになって墜落する。上手くガラスを避けることができるようになったC3POには少し安心できるが、R2D2は衝突を避けられない。なんとかならないものかと悩んでいるうちに、ちび共をお腹に乗せて昼寝していた。。
昼過ぎ、忙しくて餌の時間が遅れ、がっつくC3POに食べさせた後にR2D2を持ち上げると、R2D2がストローの餌を自分でつっ突いて食べた！この頃は食欲があるのかないのか見えなかっただけに、大いに感動してしまった。頑張れ、R2D2!!!

●６月１５日(木) 晴（１４日め）たかが２週間、されど２週間

ちび共を保護してからまだたったの2週間……!? もぅずいぶんと長いこと奴隷生活を送っていたような気がする。双葉移植した山盛りの苗は窮屈なポリポットの中でどんどん大きくなっている。庭ではハーブたちが勢力争いに余念がなく、今年もちいさなオリーブの木が草葉の陰になってきた。なんにもしないうちに一日があっという間に過ぎ去る。私の焦りを他所に、ちいさな時間泥棒たちはよく食べよく遊び、順調に成長している。
C3POはちょんの字を凌ぐ大食らいになったが、殻付き餌には見向きもしない。大好きな手をR2D2に占領されているためのやきもちか、R2D2に餌を与えていると必ず私の手に乗って邪魔をする。叱られてやむなく今日は鼻から肩経由で私の頭を征服した。ちょっと可哀想だから、寝る前にはたっぷりと手で遊ばせることにした。飛ぶのがずいぶん上手くなり、片足なのに逃げ足はさらに早くなった。
R2D2はだんだん食べるのが上手くなり、手に乗せると一生懸命に口を開けるようになった。満腹になるとストローの餌を啄んで飛ばしたりする。身体の状態は変わらず転がってばかりなのに、飛びたい気持ちばかりは旺盛で激突を繰り返していて、今日はひやっとする一瞬もあった。このまま飛ばせ続けるのも危ないので一昨日から鳥かごの床に厚手の布を敷いて入れてみるが、死にものぐるいの大暴れで怪我をしないかと気が気でなかった。気長に少しづつ慣らして、今はようやくかごの中で静かに眠っている。C3POはすぐに慣れ、天井を開けたままのかごから出入りしながら大口を開けて餌をねだる。ひょうきんなやつ・・・。

●６月１６日(金) 晴（１５日め）ダースベーダー弱る

昨夜からダースベーダー・グッチの様子がおかしく、朝から病院へ。以前からよくよろけてはいたが、へなっとこけるようになった。前に死にかけた時の貧血症状に似ていたので慌てたが、注射とお薬で少しはよくなったようだ。すずめっ子たちに気を取られて、ぐっちはGONZO任せになっていたと、ちょっと反省。ごめんね。グッチ。
明日からは雨なので、今日はついに伸び過ぎた芝刈りを決行。慣れない新品の芝刈り機に四苦八苦しながら、気になって一時間置きにちび共とグッチ婆さんの様子を見る。R2D2が居眠りばかりしているのも気になる。
C3POはいたって元気。着地も上手になり、昼間は外にばかり気をとられて食べない分、夜には猛烈な食欲でハト胸になっている。なんだか威張って見える。

●６月１７日(土) 雨（１６日め）みんなで美味しい焼き立てパン

ちび共は初めて眺める雨にちょっと興奮ぎみ。ちょんの字の頃にはずっと雨の日ばかりだったのに、この頃は雨がほとんど降らない。チビたちのことがちょいと気にはなったが、月に一度のことだしと、思い切ってパン教室に出かけた（と言っても三軒隣）。途中、餌やりに走り戻ること２回。何をするにも疲れる今日この頃である。
今回はチーズ・バンズがバリバリ美味しい出来上がりで、パン嫌いのグッチ婆さんが久々に大いなる食欲を見せ、ちび共もピーピーうるさく催促する始末。C3POは食べたいスピードに給餌のスピードが追い付かないのにイライラしてヨーダ・RITZの指を突付き回した。ようやく思いついたらしく、自分でパンをつつき始めた。R2D2は必死になって突付いて食べて、咽につまらせて吐いた。。でも、牛乳に浸してやるとまた食べた。人間共はワインと一緒に楽しんで・・・焼き立てパンは人、猫、すずめを満足させた。やはり行って良かった。。。

●６月１８日(土) 曇ときどき雨（１７日め）C3POよ、大志を抱け！

朝、鳥かごを覗くと、なんと！C3POが枝に止まって寝ていた！あの赤むけのチビすずめが、よくここまで育ったと、目頭が熱くなった。こっそりGONZOをい呼び、感動を分かち合った。
C3POは殻付き餌もずいぶん上手に食べるようになったし、片足が支え程度にしか使えないのに飛ぶのも着地も上手くなった。片足がこのままでもなんとか自立できるのではないか……とヨーダ・RITZ大いに喜ぶ。。今日はソファーでサーフィン遊びも始めたし、そろそろ砂浴び、水浴びの練習に入ろうかと思う。。C3POよ、大志を抱けーーー！
夕方、久しぶりにアオムシ捜索に出ておやつ程度を捕獲。C3POははじめRITZの手から食べていたが、すぐに嘴で突付きはじめたのでそのまま銜えさせてやると、四苦八苦していたもののペロリと呑み込んだ。その後はだんだん要領も良くなって、次々にペロリ。これは空へ近付く大きな一歩だとまたまた感動!!!
一方、R2D2は二匹までは無理に呑み込ませたものの、あとはヨーダ・RITZの指の隙間に頭を埋め、瞼も固く閉じて食べようとしない。どうして嫌いになったの？・・・もちろん答えはない。鳥かごに入れると相変わらずばたばた暴れて危ないし、外に出しておくと床を転がり回りサッシにぶつかったり、サッシの溝にはまっていたり。。結局一日の大半をヨーダ・RITZの掌で寝て過ごしている。食欲も意欲もあり、殻付き餌を食べようとはするが、餌に狙いがつけられず、身体を支えてやっても嘴は餌を外してしまう。うまくくわえてもすぐに落として食べられない。だんだん力が落ちているような気がしてならない。頑張れ、R2D2！

●６月１９日(日) 曇のち雨（１８日め）Home Sweet Home

掃除・洗濯・仕事の合間に、朝は６時から夜は８時前までおよそ２時間ごとにちび共の餌やり、糞の始末。このところ食欲の落ちているダースベーダ・グッチにも付きっきりで三度の食事・・・歳のせいか、途中で食べていることを忘れてしまうのだ。そして人間さまにも三度の食事、このところ手巻寿司や刺身、焼き鳥、焼肉の日が多い(手抜き！)。
３種の生き物の餌やりを繰り返すうちに一日が終わる。。でも、夕方のひとときは幸せだ。右手でキーボードを打ちながら日記を書いて、左手ではR2D2が寝ている。C3POは髪の毛を巣にして、頭の上で餌をよこせと騒いでいる。それを見てGONZOが笑う。事務所でダースベーダ・グッチが私も構えと鳴く。菊の字は旅行中。日記を書いてもアップも忘れる日々である。夜にはみんな揃って寝室で眠る。もちろん、ちび共はダースベーダの存在を知らず、ダースベーダはちび共のことを知ってか知らずか……、ちと甘えん坊になった様子。。。

●６月２０日(火) 雨（１９日め）C3PO、空へさらに一歩

元気満々のC3PO、肌寒くて水浴びの練習もさせられないので、今日は思い切って居間に連れて行き放してみた。C3POは勢い良く居間の吹き抜けの高窓の窓辺へと飛び上がると２時間程はたっぷりと外の鳥たちを追って飛び上がったり、いろんなものや音に首を傾げたりと冒険を楽しんでいた。下から眺めている限りでは、片足でも動きは怪我のなかったちょんの字と遜色がないように見えた。C3PO、空へさらに一歩近付いたのかな。
だが、夕方薄暗くなって外のすずめたちが静かになる頃、いつもの窓辺やソファーの上で遊んだりしているのを見ていると、片足はほとんど使っていない。左足が使えない分だけ右足が強くなっているのだろうが、見かけで遜色がなければ虐められることもなく、リリースも可能なのではないだろうか……。。一日中窓の外に向かい続けているだけに、元気で頑張っているだけに、なんとかリリースできる状態にまで漕ぎ着けたい。 　

●６月２１日(水) 曇ときどき晴（２０日め）RITZの巣作り

今日はちび共の居場所(寝室)をちょいと改造。C3POがより外を見れるように、また外のすずめがC3POを見つけやすいように、窓辺のスペースを空け、R2D2がぶつかっても怪我をしないように厚手の布を敷き詰め、サッシの溝にも布を詰めた。仕事机の椅子の周りにも厚めの布を敷いた。いつの間にか眼を覚ましたR2D2がボテッと落ちるのだ。ちび共にお披露目をして、どちらも満足気に見えるのは・・・たぶん気のせいだろうが、ヨーダ・RITZは満足。。
改造の間、R2D2はGONZOの掌の中。掃除の間はRITZのパーカーのお腹の袋ポケットで寝ていてもらった。片手でポケットを抑え、片手で掃除機やモップを使う。近頃は慣れてぐっすり眠っている。C3POは居間で単独、冒険を楽しんでいた。こちらもご満悦。。。
R2D2にはできるだけ運動をさせたり慣らしたりしたいと思うのだが、部屋に放しておくと爪を引っ掛けてねじれていたり、ガラスやサッシにぶつかったりでハラハラドキドキ、眼が離せない。かごの中でも昼間は暴れて危ない。この頃はヨーダ・RITZの手を見ると必死で近寄って這い上がってくるので、座り仕事をする間はひざの上や掌の中にいる。結局、一日のほとんどを寝て過ごすことになり、これまた心配。餌も、やはり自力で啄むのは無理のようだ。それでも食欲はあり、どうしてお腹が空くのか……と不思議。。