「うわー」
大原南の、半ばうっとりしたような声が俺の感動を深くした。
「涼しーーーーーい」
「中古とは言えエアコンだからな」
俺は満足して、吹き出し口から流れ出る涼風の中を歩き回った。
「よおし、これで残りの夏はなんでも来い、だ。バリバリ仕事してやるぞ」
「駄目ですよ、園長」
南は腕組みした姿勢で、批判がましく俺を見た。その眼差しが掛橋小夜子のそれとあまりにも似ていたので、内心ゾッとした。女ってやつはどうしてこう、男に対して馴染めば馴染むほど、母親のような顔でものを言うようになるんだろう?
「副業の方はしばらく控えて下さるって、あれほど約束したじゃないですか。あんな大怪我したばかりだって言うのに」 |
そこにひとりの女性がいた。何だかとても心細げに立っていた。
俺は近づいた。
黄昏の中で、俺はその、初めて出逢った女の顔を、よく知っている、と思った。
よく知っていた。
生後五ヶ月になる赤ん坊に、その顔はとても似ている。みゆき、という名前の、すごく可愛い赤ん坊に。
「高梨さん……ですね」
俺は声を掛けた。
彼女に瞳から、ぽろぽろと涙がこぼれ落ちた。
「どうぞ、上がって下さい。みゆきちゃんは三階にいます」
理紗がぎゅっと俺の掌を握った。
今夜はきっと、かなり幸せな夜になるな、と俺は思った。 |